導入事例
医療法人徳旺会 長谷川歯科医院様

医療 | 大阪府 | 70名~ | 全社導入

社会人基礎力を高める取り組みは、スタッフ一人ひとりにとって生涯の財産になります。トレニアを活用することで、ぬるくてラクなのではなく、居心地よく成長していける医院になる

大阪市此花区で3代続く歯科医院。診療チェア28台、スタッフ約70名と、その規模は関西でもトップクラス。2019年に完成した三階建ての院内には、インプラント専用のオペ室、保育園、社員食堂なども完備。平均的な歯科医院の10倍以上の患者数の処置を行う多忙な環境で、全員でトレニアをご利用頂いています。院長の長谷川昌徳先生、一般企業の営業職出身で総務の伊賀一彦様にお話を伺いました。

 

― 最初にお問い合わせいただいた時、長谷川院長が「就業規則や理念も浸透させたいけれど、それ以上に、もっと手前の一般常識を伝えたい」とおっしゃっていたのが印象的でした。

(長谷川院長)
当院では教育体制にも非常に力を入れていますので、スタッフは皆、歯科医院の人材として高い水準にあると自負しています。「全員で成長」していくことを目指し、診療に関わることはもちろん、マナーや接遇などの研修にも積極的に取り組んでいます。その上でさらに、「歯科の枠に留まらないように」という意識もありました。具体的には、社会や医療制度の変化、医院としての成長を考えたとき、歯科医院としての勉強だけで満足してはいけないし、長い目でみると一人ひとりのためにも、広い視野を示す必要があると感じていました。

― そういった背景からの「一般常識」だったのですね。

はい。ビジネス、社会における一般常識、トレニアでいう社会人基礎力です。歯科業界はスタッフの年齢層が若く、高校卒業後すぐに入社する社員もいますので、まず若手に対して社会常識やマナーを伝える必要があります。それだけでなく、もっと上の世代のスタッフ、歯科医師、衛生士など専門職のスタッフについても、認識を整えていく必要がありました。これは個人に課題があるのではなく、歯科業界にいると、医院規模の大小に関わらず、そういったことを身に着ける機会が少ないのが原因だと思います。私自身、開業前には100名規模の歯科医院で歯科医長なども経験しましたが、名刺の受け取り方ひとつとっても教育を受けた経験はなかったんですね。また、ある一定のレベルまでは、それで困らない、医療の仕事ができていれば良しとされる風潮もあります。しかし、私たちの仕事は医療といっても「商い」ですから、ビジネスリテラシーは必要です。とくに、5年前に医院を拡大して、70人という大所帯になってくると、歯科の規模としては異端になるので、同業の中に事例がないんですね。医療、歯科医院としての基軸はしっかり持ちつつ、組織づくりやマネジメントとしては、企業としてのレベルを高めないといけないという想いが強くなりました。 一般企業での経験が長い伊賀さんに参画してもらったのも、業界外部からの視点が必要だと感じたからでした。

― 伊賀様は20年以上、一般企業で営業をされていたそうですね。一般企業と歯科医院で、「社会人基礎力」に違いがあると感じられますか?

(伊賀様)
医療業界に特有の傾向があると感じました。一つは、医療はビジネスとは違うという認識があることです。もちろん事業会社とは違う面もありますが、収益のなかで事業を成立させることは大前提ですし、規模が大きくなれば組織として動く必要があります。また、医療は法律によって、歯科医師や衛生士に対して「責任と権限」が設定されていますが、そのことがマネジメントにも影響を与えています。

― どういうことでしょう?

一般企業の場合、学校を出て就職したら、最初はみんな一番下の「新入社員」ですよね。まず一番下の立場で経験を積んで、次に先輩となって後輩の面倒を見る、さらに数年を経て上司や管理職になるというステップがあります。周囲には同僚や同期がいて、その過程で業務知識や経験だけでなく、部下としての振る舞い、教えることの難しさを知って「上司」になります。一方、歯科医師の場合は、いきなりドクターという指揮系統上の監督者になるんですね。1年目の歯科医師でも、法律上はベテランスタッフの上役になる。こういった状況が、社会人としてのコミュニケーションや振る舞いを学びづらくさせる一因になっていると感じます。また、歯科医師や衛生士、技工士は専門職ですから、技術の習得に目が向きやすく、一般的なビジネスリテラシーが後回しになってしまう側面もあると思います。

― 専門職以外のスタッフさんは若手が多いですよね。

(伊賀様)
スタッフの多くはいわゆるZ世代ですので、その難しさもあります。学校でも怒られてこなかった世代なので、ちょっとした指摘をする際にも、昔にはなかった配慮が必要です。指導のスタイルとして「叱るのは全体に対して。1人に対しては叱るのではなく諭す」と心がけています。ミスや問題が起きたとき、個人へのフィードバックにしてしまうと言われた側もきついですし、ダメージの割に組織に対する効果が薄いんですよね。みんなの話にできれば、組織全体のためになるし、当事者も1人で言われるよりキツくありません。ただ、昔ならその場で灰皿が飛んできて身に着けていたようなことを、やんわり気を遣って伝えていくので、どうしても「足りない」んですよね。とはいえ厳しい指導はできない。じゃあどうしたら…と堂々巡りになっていました。
(長谷川院長)
フィードバックは本当に難しいです。70人の組織図がある中で、院長の私から直接、1年目のスタッフに話せる機会はほぼありません。枝分かれして伝達していくことになり、それは組織として正しい在り方なのですが、どうしても「伝わり切らない」ことも出てきます。そもそも、毎日診療で忙しく、時間もない中で、社会人としての一般常識をどうやって伝えていくのか。本当に堂々巡りだった中で、あるとき同業の先生がSNSでトレニアのクイズを紹介されていて、確かノーワーク・ノーペイの原則を伝える内容だったと思うのですが、それを見て「これなら良いのでは?」と感じて問い合わせました。

― 夏休み明けのタイミングで、全員で一斉にトレニアを始めていただきました。実際に初めていただいて、いかがでしたか?

(伊賀様)
まず「誰がやっていて誰がやっていないのか」というデータだけでも「なるほど…」と思いました(笑)。クイズの正答率は、他社と比べて意外と高いものもあれば、極端に低いものもあったり、医院としての傾向がハッキリ出ましたね。私も毎日クイズに答えていますが、「社会人として当たり前」、でも「直接言うとカドが立つこと」が多くて、これを伝えていけるのはありがたいと思いました。1個ずつ指摘するとギスギスしてしまうところ、指摘でもなく、トレニアを通じて問いかけていけます。先ほど「叱るなら全体に対して」とお話しましたが、トレニアならさらに、ミスも問題も起きていない状態でトラブルを疑似体験でき、「傷つかずに学ぶ」ことができるので、時代にとても合っていると思います。
(長谷川院長)
何がわかっていて、何が分かっていないのか。そこが可視化されたことが、まず大きいですね。トレニアは他社との比較もできますよね。私の求めている基準は「企業としての組織づくり」ですので、歴史が長かったり、規模の大きい事業会社をベンチマークとして、当院の社会人基礎力を明確に把握できるのは、まさに求めていたところです。また、クイズの内容は、敬語やマナー、労働契約の重みや働く上での義務など、毎日「言ってもらって良かった」と感じることばかりです。歯科には様々な背景の人がいますので、こうした基本を毎日伝えてもらえるのは本当にありがたいと感じています。

― 土曜・祝日も診療されていて、来院患者数も平均の10~20倍くらいだと思うのですが、それだけ多忙ななかでもできますか?

(長谷川院長)
はい。私も日々クイズに答えていますが、スマートフォンで手軽に、数分でできるので負担はありません。トレニアはこの「毎日少しずつ」というのが良いと思っています。社会人基礎力は一朝一夕で身に着くものではなく、日々のフィードバックが欠かせませんが、毎日診療で忙しい中で、院長や管理者から全てを伝えていくのは現実的ではありません。その点、トレニアは、毎日少しずつ手軽に取り組み、みんなで成長していけます。

― 導入から半年経ちますが、トレニアの効果は感じられていますか?

(伊賀様)
管理者として、良い意味で楽になりました(笑)。「言えなかった」部分をたくさん代わってもらっています。また、みんなのデータを見ても、同じクイズが出題されたとき2回目はちゃんと正答率があがっていますし、徐々に力がついていると思います。クイズによっては朝と帰りの自己評価にも変化があります。知らなかったところから「知っている・わかる」になって、「できる」になっていく。それがデータとして見えるだけで、「分かってるのかな」と悶々とすることが減りました。スタッフ同士でも「今日のトレニア難しかったね」といった話題も出るようになったりして、良い流れになっていると感じています。そうやって続けていく中で、みんなの認識が整っていけばと思っています。
(長谷川院長)
トレニアに毎日触れて、「一般的にはこうなんだ」という知識や気づきを得る中で、一人ひとりが社会人としての成長を感じていけると思います。やはり「毎日」というのが大事で、時間を取って行う研修も大切ですが、継続的に積み重ねていくことの効果は大きいと感じます。また、他の研修や実務との相乗効果、他で勉強した成果を改めてトレニアで確認できたり、トレニアで学んだことを実践で活かせたりと、多方向から学ぶことで、知識がより深く定着していくと思います。

― 企業としての組織づくりという点ではいかがでしょう?

(長谷川院長)
社会人基礎力という点では、歯科業界だけ見ていると基準値がないので、なかなか「診断」ができないんですね。トレニアはまず、データとしてその診断ができる、課題や原因がわかるということに意義があります。多種多様な企業をベンチマークとして、当院の現在地が分かりますので、それを踏まえて、数か月前から、正答率の低かった問題を抜粋して再テストするなどの取り組みも始めました。
歯科業界はドクターや衛生士の不足だけでなく、受付や助手は一般企業にも転職できますから、「定着」は大きな課題です。教育にも年単位で時間がかかる中、社会人基礎力の不足のために心が折れてしまったら、医院としてもスタッフ個人としても、本当にもったいないことです。育成というのは一朝一夕にできるものではありませんから、あらゆる角度から時間をかけて取り組んでいくことが大切だと考えています。

― 他の歯科医院の方にメッセージをお願いします。

(伊賀様)
歯科医院には、最初にお話ししたような医療機関ならではの難しさもありますし、若手、女性が多いという特徴もあります。また、一般企業との違いという点では「就業年数の短さ」も驚いたことの1つです。当院ではライフステージが変わっても働きやすいよう、保育園も設置したり、制度も整えています。しかし「定着」には、環境や制度などの外部を整えるだけでなく、みんなが自分の仕事や職場を好きになることや、長く働き続けるための強さを育てていく、内面の成長も必要です。トレニアを活用することで、ぬるくてラクなのではなく、居心地よく成長していける医院になると思います。
(長谷川院長)
クリニックが成長して、院長の目が届く範囲を超えるようになると、綺麗ごとだけでは乗り越えられない「組織のリアル」に悩むことがあります。また、今後、医療制度の変革や社会構造の変化のなかで、私達クリニックはより一層、企業として高い水準を求められていくことになるはずです。社会人基礎力を高める取り組みは、医院にとって重要なだけでなく、スタッフ一人ひとりにとって生涯の財産になります。
トレニアは、組織で働く上での強さを育ててくれるものですから、一人ひとりの成長の先には、組織の成長があると思います。組織づくりの壁を前に「どうしたら良いのか」と感じている先生には、トレニアは本当に助けになるはずです。

― 本日はお忙しいところありがとうございました。